未来のない優しさ
美晴は、まだ何かを言いたそうな目をしているけれど。

「…美晴も、あの事故の
被害者なんだから…。

知らないまま何年も放っておいて悪かった。

柚が幸せになることが、
美晴の気持ちを楽にさせるのなら、これからは
もう悩む事はないから」

「柚ちゃん…どこまで
言ったの?」

杏を抱きしめて…涙を我慢しているのがわかる声。

妹なのに…。
何も気付いてやれなかった。

「柚は、多分全部を話してくれたと思う。

美晴を解放してあげたいって言ってたぞ…」

「…」

杏をあやしながら黙り込む美晴は、ずっと俺に見せていた強気な鎧を外した、昔から知る華奢で弱い女の子に戻っていた。

「柚ちゃん…雑誌に写真載っても平気なの?」

「ん…?
平気な振りを平気でできる強さを身につけた…

って感じだな」

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