未来のない優しさ
二人でまったりと湯舟を楽しんだ後、新居となる家の間取り図を見せてもらった。

『さっさと決めたから』

と笑う健吾には驚いたけど、とにかく急がなきゃいけない焦りが消えてホッとした。

「引っ越しは月末の日曜日だから。
美晴達も手伝いにくるって言ってたし」

「…美晴ちゃんの家に近いね。
杏ちゃんにも会いやすくなる…」

「ますますかわいくなってたぞ。
美晴の小さい頃に似てきてたな」

「…いいな。今日会ったんだ」

拗ねながら言う私を抱き寄せて、膝の上にのせると。
リビングの小さなテーブルに広げられた間取り図を指して

「いつでも、呼べばいいさ。
美晴も仕事に復帰するらしいしな。
たまには預からなきゃならなくなるだろうし」

何気なく言っただけだろうけど、美晴ちゃんが仕事に復帰する…。
その事は、私にはかなり嬉しい事。
妊娠した途端に休職していたのはきっと、私には望めない『杏』という子供を無事に産む為。

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