未来のない優しさ
「もう…誰も苦しまなくていいのに」

健吾の胸に頭を預けて呟くと、温かい手が私の背中をぽんぽんとたたいてくれる。

「それは、お前に言ってやる。
もう悩まなくていいのは柚だろ…?」

「私…?」

「一生かけても悩める量じゃない悩みを抱えて生きてきたんだ。
だけどな。
もう時間切れだ。

悩むなら俺に愛されすぎる事に悩め。

その悩みにも解決策はないんだけどな」

…どんな顔でこんな甘い言葉を囁くんだろう…。
言われた私のほうが照れてしまって鼓動も一気に跳ねる。

そっと見上げると、普通に私を見つめる瞳。

「照れてる?
相変わらずの女子高生ばりの反応」

くくっと笑って、そのままぎゅっと抱きしめてくれた。

何のためらいもなく、無防備な顔で笑う健吾だってまるで高校生のようだけど。

そんな事気にしないんだろう明るい声を聞くのが嬉しくて、黙っていた。
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