未来のない優しさ
「…反応は女子高生だけど、しっかり三十路の柚ちゃんにはこれを書いてもらおう」

私を胸に抱きながら一枚の紙を広げて、テーブルに置く。
ほんの少し、健吾の口調が緊張していると感じるのは気のせい…?

「何…?」

体を起こして、健吾が広げた紙を見ると。

「え…?婚姻届…?」

じっと固まった視線は
ただ一点を見つめ続けるばかりで、既に記入を済ませている健吾の文字がやたら特別な意味に思える。

「式は年末だけど、籍は早めに入れるから」

耳元で話す低い声は、問いかけではなくて報告。

驚く私を予想していたのか、

「拒否権はなし。

今まで長い時間を離れてたんだ。

これ以上は待てない」

ずっと、そう思ってくれていたんだろう…。
その切ない響きが私の心に落ちてくる。
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