未来のない優しさ
左手に輝く指輪の光までが、健吾の気持ちを後押ししているように思えてくる。

私も…健吾と一緒に幸せに生きていきたい…。
隣にお互いの体温を感じながら歳をとっていきたい。

でも…。

「結婚…する自信がない」

そう呟くしかできない。
自分が情けない。

「側にいたいし、健吾を独占して愛したい。

でも…健吾をつなぎ止める自信がないの…」

はっと気付く。
どうして結婚にふみきる気持ちになれないのか。

私が子供を産んであげられないこと。

一生無理ができない体だということ。

理由は幾つか浮かぶけれど、そんな理由は健吾が包み込んでくれる愛情で克服できた気がする。

だから、どうして。

プロポーズを二つ返事で受けるのをためらうのか。

自分の気持ちがよくわからなかったけれど、ふと出た言葉が私の胸の奥に隠れていた本音なんだと気づく。
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