未来のない優しさ
「…柚…」

健吾の声から感じるのは
驚きじゃなくて落胆。

「まだ…俺を許せない?
他の女に気持ちが移るとか…疑ってる?」

「…健吾の気持ちは信じてる。
私を愛してるってわかる」

「じゃ、なんで」

「…うまく言えないけど。健吾を本当に大切に思ってるのは信じて。

ずっと側にいたい。

でも…健吾がもしも…他に幸せを見つけて私から離れたくなった時がきたら…」

そんな事考えただけで悲し過ぎて涙が溢れてくる。

「私…健吾を引き止める努力ができるかが…自信がないの」

「…意味わかんない。
第一、柚の側から離れる気なんてさらさらないし」

私の肩をつかみ、見つめる瞳は焦っているよう。

「あの時…映画館で健吾とマネージャーを見た時。
どうして二人一緒なのかを聞きたかったけど。
…怖くてできなかった。

健吾を信じられなかったからだと…

浮気の現実を知るのが嫌だったからだって…

思い込んでたけど、違うの」

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