未来のない優しさ
どんどん小さくなる声を必死に出して、健吾に伝わるように。

「あの時、健吾に声をかけて…私の恋人だって…
誰にも渡さないって…
言いたかったのに言えなかった」

励ますように、先を続けるように、促す優しい視線を投げてくれる健吾に甘えて。

ほとんど涙声の私の言葉は止まらない…。

健吾の首にしがみつくと、ふっと背中に回される手から感じる温度に更に涙が溢れる。

「マネージャー…綺麗だし性格も良くて誰からも好かれてたし…。

健吾の隣に並んだら、本当に二人はお似合いで。

何から何まで平凡な私よりも健吾にぴったりだって思ったら、何もできなかった」

「…そうか…」

「健吾が裏切ってるなんて…本当は思ってなかった。
ただ、健吾の側にいる自分があまりにも不釣り合いな事に気付いて、辛くなって…」

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