未来のない優しさ
健吾は、それぞれの両親に結婚の報告をしていた。
私の両親は…諦めていた私の結婚に泣いていたらしい…。

健吾の両親は、私が事故に遭ったのは少なからず健吾に責任があるという罪悪感も手伝って、

『…必ず幸せにしてあげなさい』

と言って泣いたらしい…。

これは美晴ちゃんが呆れながら教えてくれた。

そして、

『柚ちゃんの気が変わらないうちにとっとと籍を入れてしまいなさい』

と健吾を急かしたらしい…。

何の反対もなく順風満帆に進んでいく流れに巻き込まれているこの状態が、私の緊張感を高めている…。

ずっと、次々にやってくる苦しみや悲しみに堪えながら、逃げ道を探し、受け止め方を考えながら生きてきた。

私の人生は、順番待ちをしている悲しみと辛さを都度乗り越えていく為の時間で成り立っているんだと…。

そう諦めて生きてきたから。
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