未来のない優しさ
早く仕事を終わらせて、夕方役所に行って、柚を俺の戸籍に入れてしまいたい。

まだ結婚に不安を抱いている柚の気持ちを無視するわけじゃない。

その不安ごと愛して。
俺の嫁という現実を幸せに思えるように…。

今朝見た柚の寂しそうな表情を思い出すと胸が痛いけれど、明日からはもう。

俺は完全にお前のもんだから。
寂しい顔はさせないから。

…ぼんやりと考えていると、ポンと肩を叩かれてはっとする。

「早いね。部長はまだみたい」

望がにっこり笑って向かいに腰掛ける。
アマザンホテルのカフェでの待ち合わせ。

沢木田建設の部長達はまだ来ていない。
多少早く来すぎた俺が考えるのは柚の事ばかり。
勘のいい望にばれないよう気を引き締める。

「…せっかくの休みなのにごめんね」


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