未来のない優しさ
未来につなぐ優しさ

優しく強く

その日の夕方、点滴が終わった後に柚を連れてマンションに戻った。

一晩入院した方がいいらしいが、頑として拒否する柚を説得する事はできなかった。

部屋に帰って。

リビングで寛いでいても、体調が気になって仕方ない俺に申し訳なさそうな顔を向けられて、ほっとため息をつく…。

「心配かけてごめんなさい。
もう、倒れるまで無理しないから」

カーペットに座っている柚の隣に行くと、膝の上に抱き上げて額と額を合わせた。

「…心臓が止まる思いなんてさせるなよ。
俺の腕の中で消えてしまうかと…」

「健吾…。大丈夫だから。私はもう消えないよ」

しがみついてくる柚の震えている身体に、確かに生きている暖かさを感じて…思わず強く抱きしめ返してしまった。

首筋に唇を這わせて、時々ビクッとなる場所に狙いをつけてきつく吸いあげると…

「や…」

と吐息混じりの声が俺を更に煽る。

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