未来のない優しさ



打ち合わせは順調に終わって、既に何人かは会議室を後にしていた。

広がるファイルやメモをまとめながら時計を見ると

…もう8時か…。

今日も残業だな。
朝から何も食べてない体はくたくたで、とにかく疲れてる。

報告書と議事録のチェックだけ済ませたら、帰ろうかな…。

ふう。

知らない間に溜息をついてしまった。

感情を表に出さないようコントロールできる事を生きていく強みにしているけれど、最近…というより健吾と再会してからは、その強みも私を守ってくれない。

「…川原さん」

「はい…。って…相模さん」

ふと呼ばれて振り返ると、今まで一緒に打ち合わせをしていた相模さんが親しげに笑いながら立っていた。
< 68 / 433 >

この作品をシェア

pagetop