未来のない優しさ
もう寝た事にして無視しよう…。

そう思ったけれど、インターホンが鳴りやむ事はなく、健吾の不機嫌な表情も更にひどくなっていく。

「…はぁ。何なのよ」

モニター越しにそう言うと、ただ一言。

「開けろ」

…。

「女とはちゃんと切れてるから、開けろ」

「私には関係ないし」

「関係あるだろ。結婚するんだし」

「…はぁ?」

「今日俺達の親にも言ってきたしな」

「…な…何を…勝手に。結婚なんてしない」

一体何を言い出すんだろう。
誰とも結婚する気なんてないのに。

ただ、嘘やからかい半分でこんな事を健吾が言う訳ない…。

慌てて玄関を開けると、限りなく機嫌の悪い顔をした健吾がいた。
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