未来のない優しさ
じっと見上げる健吾の前で、涙をこらえるだけしかできない…。

「柚ちゃん…。ずっと会社でそう呼ばれてるんだな」

「え…?どうしたの…」

「俺の事務所がお前の会社の顧問になって、今日挨拶に行ったんだよ」

ふ…と軽く言いながら、健吾は私の手を掴むと。

「ちょ…ちょっと…」

あっという間に自分の膝の上に私を引き寄せた。

思わず健吾の胸に頬を寄せている自分に気付いて、抱きしめる腕から逃げようとしてもぎゅっと力の入った腕からは逃げられない。

「健吾…離して…」

押し付けられた胸につぶやいても、抱きしめられたまま。

「法務部の課長が柚の事知ってたよ」

法務部…

「あ…最上課長…?」

入社してすぐの研修でお世話になった。
会社の法務大臣と言われてる。
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