未来のない優しさ
「でも、『柚ちゃん』ってみんなから呼ばれる柚が本当の姿だから、仕事はほどほどにして欲しいって」

「最上課長が?」

思わず顔を上げた私に優しく微笑むと、再び私の頭を胸に抱いた健吾。

「だから…無理しなくていいから。
俺と結婚しろ」

ぽんぽん頭をたたくように撫でる手の温もり。

背中に感じる手の力強さ。

こんなにほっとするものだとは思わなかった。

健吾から離れるしかできなかったあの日から、周りから気をつかわれるのが嫌で嫌で必要以上に笑って。

将来はお嫁さんになって、ふんわり柔らかなお母さんになりたい…。

そんな夢も捨てて、この不自由さを感じる足で何とか立ってきた。
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