未来のない優しさ
許されるなら、このまま健吾に包まれていたい。

けれど。

「結婚はできない」

感じるすべての悲しみを追い払って、一気にそう吐き出した。

途端に健吾の腕にぐっと力が入った。
ゆっくりとその胸から引き離され、見上げると、かすかに揺れる瞳には暗い光。

「…柚がなんと言おうと結婚する」

「…無理…。なんで私にこだわるの…?」

「こだわってるのはお前だろ…」

「え?」

そう切なく苦笑しながら私の頬を両手で挟むと、
ぐっと引き寄せ

「ん…。け…健吾」

驚く私の唇に…温かい健吾の唇が落ちてきた。
< 82 / 433 >

この作品をシェア

pagetop