未来のない優しさ
意識が戻ったのは事故から五日後。

助からない可能性の高かった中で、とにかく命は取り留めた。

その知らせを聞いて、バスケの合宿先で泣き崩れた事を覚えている…。

マスコミが病院に押し寄せた事で家族以外の面会は禁止され、俺も全日本代表の選考のかかった合宿を抜ける事はできなくて…。

もう二度とこの腕に抱く事ができないんじゃないかと、柚を失う怖さで俺自身壊れそうだった…。

すぐにでも抱きしめたかったけれど、再び柚をこの腕に取り戻したのは。

それから14年も経った夕べ…。
涙を流しながらしがみついてくる柚を、高校生の 時には感じなかった深い想いで抱いた。

もう…俺の腕から離れる事のないよう体中に花を咲かせながら。


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