未来のない優しさ
日も暮れて、秘書の二人も既に帰ってしまった。
柚が巻き込まれた事故の記録を読む事に集中していたせいで、もう9時を回っている。

読み進めていくにつれて重く悲しくなる気持ちを何とか強く保っていたせいか、ひどく疲れてしまった。

空腹のはずなのに、神経がびりぴりしていて何も食べたいと思わない。

裁判で、腑に落ちない判決が出て興奮しているような…。

そんな時には大抵、電話だけですぐにやってくる女と夜を過ごしていたけれど。

柚と再会してからはそんな事もかなり減った。
そして夕べ柚を抱いてからは、他の女に手をのばす事は考えられない。
それどころか、今すぐにでも、手の届くところに柚を置いていたい。

とにかく、二度と俺から逃がしたくない。
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