彼執氏 *強引彼氏は執事様*
「私の名前は、五十嵐 慶です。」
「いがらし…けい。」
『ケイ』がまさか『慶』だとは…!
「…お父さま?分かっていらっしゃるはずよね?」
私は冷静に、かつ低い声でお父さまに尋ねる。
「ヒィッッ!!?ごっ!ごめんなさい!!!
でも、真梨もそろそろ慣れないと…ね?」
ビビりながら聞いてくるお父さま。
安斎財閥の頭首の威厳はゼロに等しい。
「ではお嬢さま、これから宜しくお願いいたします。」
そして五十嵐は私の手にキスをした…。
「ギャー!この、ぶ、無礼者がァ!!!」
バシッ
そこに残るのは、
静かで気まずい空間と、五十嵐の頬にある赤い痕。
勿論手形です。