成長する
たしか、今朝のニュースで報じられていたのも、旧繁華街だったはず。……西区の。

琴実ではないが、被害者の共通点はみな、中学生であること。

そして、少女であること。

自分達は、いずれにも該当する。

事件があったばかりの土地へ行くとなると……自然、竦み上がってしまう恐怖が、背中にそっと寄り添ってくるようだった。

「あ、――あははっ、だいじょぶ、大丈夫だって!」

と、美幸があまりに心配した表情をしたからか、琴実はいっそ笑った。手までハタパタと振る。

「奈美ちんについてきてもらうし、心配要んないよっ。ほら、この方、メンキョカイデンですから」

「だれがよ、バカ」

「相手のほうがけっちょんけっちょんに!」

「しないわよ!」

恭しくわざとらしい、大袈裟な紹介をされて、奈美が琴実の手をはたき落とした。

奈美はこう見えて、合気道四段である。少なくとも、そのへんの中学生や小柄な琴実よりは頼りになる。

上に、同じく合気道を習っている兄が二人もいるらしい。武道家なのだ。だから多少、口が悪いのかもしれない。
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