成長する




旧繁華街に予定通り寄っていくという琴実、その付き添いの奈美と別れた美幸は、日が暮れる前に家についた。

季節は夏を過ぎた、初秋。まだ日の出ている時間は長く、六時を回っても、綺麗な夕焼けが街並みをモノオレンジに染めていた。

リビングに入る前に、美幸は目を閉じる。磨りガラスのはまったドアのノブに手をかけながら、

(六時……三十、二――いや三分、の十、六秒!)

心の中で予測して、突入する。

室内の壁にかかっている丸時計は、予想通りきっかり、六時三十三分十六秒だった。

「やった! 今日も当たり♪」

ついでもなく、ガッツポーズが出る。帰宅時刻を当てるのは、小さい頃からのマイブーム……いやいっそ、日課のようなものだった。

奈美に驚かれた体内時計も、こうして日頃磨いているからこそである。

もっとも、それ以前にも、美幸は自分の中の〝脈〟を感じるのが得意なのだ。

鞄を放り、制服から私服に着替えている最中、兄からの置き手紙に気付いた。

「ん、と。なになに?」

人型クッキーみたいな重りで押さえてあったそれを、手に取る。

内容は、今日の帰宅が遅くなる、というものだった。
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