成長する
兄は内職である。なにをしているかは教えてもらっていないが、安定しているらしく、わりと頻繁に仕事の依頼が来る。

その打ち合わせに際して、どこか外で待ち合わせるというのも珍しいことではなかった。

どうやら、夕飯までには帰れないらしい。追記として、朝のパンが残っているとあった。

「残り物か~」

と、夕食のわびしさを嘆いた美幸は、

「? んー?」

手紙が、裏にまで続いているのに気付いた。追記の追記だ。

と思いきや、そうではなく、まったく関係ないものが書き連ねてある。資料か、メモのようだ。

どうやら、この置き手紙はその裏を使ったらしい。

ざっと目を通してはみたものの、意味がわからなかった。

151、60、90と、ほかにも数字が書いてある。なんの数字だか、やはりわからない。恐らく兄の仕事関連だろう。

捨ててしまっていいかもわからない。ひょっとして、まだ使う資料だったらどうしようか。帰ってきたら、渡したほうがいいかもしれない。

美幸は手紙をそっと、もとあったように戻した。ただし、兄がこの紙に気付けるよう、裏返して。
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