成長する
――じゃくり。と、焼き色のついたパンにかじりついた。
朝もパンで、昼も購買のパンで、夜もパンである。こんな食生活で、自分はまっとうな成長ができるのか、胸は膨らむのかと、少女は苦笑混じりに懸念する。
じゃくり。とまた一口、かじりつく。朝と同じバターでは飽きるので、戸棚にしまってあったハチミツを出した。こんがり焼けた食パンに、ハチミツの甘さがちょうどいい。
たしかに朝の残り物だが――簡単で美味しいとくれば、言うことなしである。
じゃくり。
(お兄ちゃん、早く帰ってこいよって言ってたくせに)
自分では、ふらりと出掛けて遅くなるなどと、ずいぶん勝手だと思った。
兄は今、二十四だ。自分とは十も離れている。さすがに大人なのだから、中学生の妹が心配するのもおかしい。
だが、兄はどちらかと言えば間違いなくインドア派だし、どことなくぼんやりしているところがある。
ただでさえ、市を騒がせる連続殺人が起きているのだ。ブラコンな美幸として、心配するなというほうが無理だった。
朝もパンで、昼も購買のパンで、夜もパンである。こんな食生活で、自分はまっとうな成長ができるのか、胸は膨らむのかと、少女は苦笑混じりに懸念する。
じゃくり。とまた一口、かじりつく。朝と同じバターでは飽きるので、戸棚にしまってあったハチミツを出した。こんがり焼けた食パンに、ハチミツの甘さがちょうどいい。
たしかに朝の残り物だが――簡単で美味しいとくれば、言うことなしである。
じゃくり。
(お兄ちゃん、早く帰ってこいよって言ってたくせに)
自分では、ふらりと出掛けて遅くなるなどと、ずいぶん勝手だと思った。
兄は今、二十四だ。自分とは十も離れている。さすがに大人なのだから、中学生の妹が心配するのもおかしい。
だが、兄はどちらかと言えば間違いなくインドア派だし、どことなくぼんやりしているところがある。
ただでさえ、市を騒がせる連続殺人が起きているのだ。ブラコンな美幸として、心配するなというほうが無理だった。