成長する
じゃくり。

七時を回っても、兄は戻ってこない。ひょっとしたら、先に寝ていたほうがいいだろうか。

両親を亡くし、兄は、ひとりで自分を育ててくれた。

考えてみれば、すごい話だ。自分の記憶がない頃に両親が亡くなったということは、イコール、兄は、自分が物心つく前から生活を担っていることになる。

つまり、十歳と少しぐらいには、自力で生活していたのだ。

家はここがある。が、金銭的な問題は、どう解決していたのだろう。両親が資産家だったという話は、噂ですらついぞ聞いたことがない。親類縁者の助力があったのだろうか。

なんにせよ。自分がここまで成長できたのは、想像できないような辛苦を兄が乗り越えてくれたおかげである。仕事で帰りが遅いならば、おかえりなさいぐらいは言いたかった。

(想像できない、と言えば――)

そこで、美幸の思考は飛躍する。今朝のニュース、果ては、連続殺人を犯している犯人の、目論見へと。

(どうして、犯人は、中学生ばっかり狙うんだろ……?)

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