成長する
†
†
じゃくり。
兄がこんがり焼けたパンにかじりつく音が聞こえて、美幸はハッと顔をあげた。
どうやら、ボウッとしていたらしい。
すでに起きてから顔も洗い、制服に着替えているのに、首がうな垂れていた。眠気だろうか。わからないが、とにかくボウッとしていた。かぶりを振って、目を覚ます。
昨日、兄の帰りを待ってそのままソファーで眠ってしまった美幸だが、朝起きてみたら自室のベッドだった。兄が運んでくれたんだろう。記憶にないが、そんな気がする。
(…………あれは、夢じゃなかったのかな……)
と、連結して思い出すのは昨日の、頬へのキスのこと。
静かに、美幸は兄の顔を盗み見た。
きょうだいとして似ているかは、よくわからなかった。
二十四歳の兄は、まだ、十代後半としても通じそうだ。若干の猫背、広く、けれど薄い胸板に、目にかかった黒髪。
最近の男が細く、白く、縦長なように、兄も類に漏れていなかった。ただでさえ、内職で家から出ることも少ないので、不健康にも見える。
それでも、朝が苦手なことを除けば、自分にとってなんの問題もない、素敵な、頼れる兄だった。その事実に、変化は、変異は、ない。
じゃくり。
兄がこんがり焼けたパンにかじりつく音が聞こえて、美幸はハッと顔をあげた。
どうやら、ボウッとしていたらしい。
すでに起きてから顔も洗い、制服に着替えているのに、首がうな垂れていた。眠気だろうか。わからないが、とにかくボウッとしていた。かぶりを振って、目を覚ます。
昨日、兄の帰りを待ってそのままソファーで眠ってしまった美幸だが、朝起きてみたら自室のベッドだった。兄が運んでくれたんだろう。記憶にないが、そんな気がする。
(…………あれは、夢じゃなかったのかな……)
と、連結して思い出すのは昨日の、頬へのキスのこと。
静かに、美幸は兄の顔を盗み見た。
きょうだいとして似ているかは、よくわからなかった。
二十四歳の兄は、まだ、十代後半としても通じそうだ。若干の猫背、広く、けれど薄い胸板に、目にかかった黒髪。
最近の男が細く、白く、縦長なように、兄も類に漏れていなかった。ただでさえ、内職で家から出ることも少ないので、不健康にも見える。
それでも、朝が苦手なことを除けば、自分にとってなんの問題もない、素敵な、頼れる兄だった。その事実に、変化は、変異は、ない。