成長する
(これが、琴実……?)
ニュースで言っていた。
遺体は、両足が引きちぎられていたと。
こんな、眠りについたような安らかな顔で、琴実が横たわっているはずがない。
棺で見えない部分――足のほうはきっと、空っぽだ。
見えるところだけ、〝見られるように〟綺麗にしただけされただけ。
まつ毛に埃がかかっていた。かさついた唇がひび割れて、皮が少し剥けていた。
(琴実は、こんなんじゃない……)
結局、美幸は親友の正面に立ったあと、自分がなにをどういう手順で行ったか覚えていなかった。
ただ、いつのまにかクラスメイトらの列に戻り――そこで、だれかに、引っ張られた。
引っ張ったのは、奈美だ。気付かれないようにこっそりと、通夜が開かれている奈美の家の外へ、美幸を連れ出す。
あまり人のいないところで立ち止まり、振り返った奈美は――涙を眦に溜めていた。
「美幸……っ!!」
声は小さかったが、ほとんど叫ぶような言い方だった。気丈な奈美が、しがみついて来る。
「どうしよう、美幸……私、私、見たんだ……」
「……見たって……なにを?」
「…………琴実を殺した、犯人……」
ニュースで言っていた。
遺体は、両足が引きちぎられていたと。
こんな、眠りについたような安らかな顔で、琴実が横たわっているはずがない。
棺で見えない部分――足のほうはきっと、空っぽだ。
見えるところだけ、〝見られるように〟綺麗にしただけされただけ。
まつ毛に埃がかかっていた。かさついた唇がひび割れて、皮が少し剥けていた。
(琴実は、こんなんじゃない……)
結局、美幸は親友の正面に立ったあと、自分がなにをどういう手順で行ったか覚えていなかった。
ただ、いつのまにかクラスメイトらの列に戻り――そこで、だれかに、引っ張られた。
引っ張ったのは、奈美だ。気付かれないようにこっそりと、通夜が開かれている奈美の家の外へ、美幸を連れ出す。
あまり人のいないところで立ち止まり、振り返った奈美は――涙を眦に溜めていた。
「美幸……っ!!」
声は小さかったが、ほとんど叫ぶような言い方だった。気丈な奈美が、しがみついて来る。
「どうしよう、美幸……私、私、見たんだ……」
「……見たって……なにを?」
「…………琴実を殺した、犯人……」