成長する
その言葉で、ずっと水中に微睡んでいたような美幸の意識が、錨で定着した。
奈美の肩を掴み返す。
「それ……警察には……?」
目撃者がこうしているんだ。犯人の特徴などを証言すれば、事件解決はぐっと早くなるに違いない。
ところが、奈美は首を横に振った。長い髪が揺れる。何度も何度も。
「言ってないわ……言えるわけないじゃない……」
「どうして……!」
「だって、人じゃなかったのよ!!」
「!?」
小さな声だったが、それは絶叫だった。自分の見たものを真っ向から否定し、記憶からも排除してしまいたい。そういう、目撃したゆえの悲痛な叫びだった。
「どういう、こと……?」
見たものが、よほど衝撃的だったのか……奈美はしばらく、堰を切ったように嗚咽していた。いや、もしかしたら、今また、目の前で親友が殺された場景を思い返しているのかもしれない。
「……女の子、だった……」
と、やがてやおらに奈美は言った。
「女の子?」
「そうよ。……小さい、十歳、か……、それよりまだ小さい、っ、ほんと、女のっ、子……」
「……人じゃなかった、っていうのは……?」
奈美の肩を掴み返す。
「それ……警察には……?」
目撃者がこうしているんだ。犯人の特徴などを証言すれば、事件解決はぐっと早くなるに違いない。
ところが、奈美は首を横に振った。長い髪が揺れる。何度も何度も。
「言ってないわ……言えるわけないじゃない……」
「どうして……!」
「だって、人じゃなかったのよ!!」
「!?」
小さな声だったが、それは絶叫だった。自分の見たものを真っ向から否定し、記憶からも排除してしまいたい。そういう、目撃したゆえの悲痛な叫びだった。
「どういう、こと……?」
見たものが、よほど衝撃的だったのか……奈美はしばらく、堰を切ったように嗚咽していた。いや、もしかしたら、今また、目の前で親友が殺された場景を思い返しているのかもしれない。
「……女の子、だった……」
と、やがてやおらに奈美は言った。
「女の子?」
「そうよ。……小さい、十歳、か……、それよりまだ小さい、っ、ほんと、女のっ、子……」
「……人じゃなかった、っていうのは……?」