成長する
「クラスメイトの子とかは、そろそろ発育がよかったりするのか?」

「クラスメイトの?」

節操のない質問を、歳が十も離れた妹に平気な顔でしてくる。初対面の人間はみんな驚くが、自分は慣れたものだ。

「そだね。うん。けっこうボインになってきてる子もいるよ」

「そうか。……羨ましさとかあるのか?」

「どうかな……そのうち私も大きくなると思うし。あ、あとあんまり大きいと肩凝るって聞くし?」

美幸は中学二年である。そろそろ、周りの友達も、ただ細いのではなく女っぽい膨らみやくびれが目立ってきていた。

美幸は、やや発育がかんばしくないらしい。この歳にして、胸は非常になだらかだった。

太ってはいないが、手足がひょろ長いので、あまり自慢できる体はしていない。

兄と二人暮らし。両親はいない。美幸も記憶してない頃に亡くなったらしい。写真も残っていないそうだ。

家はあるし、〝儲かる〟内職で稼いでくれている兄のおかげで、食うにも困っていない。もっとも、兄の仕事はよく知らないが。

ただ、たったひとりの妹が心配なのか、兄は異常な過保護を見せることがあった。恥じらいもない直球な質問も、そのひとつだ。
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