成長する
じゃくり。

最後の一口を放り込み、飲み込んだ兄が、一息つく。

ニュースでやっている凄惨な事件など、もはや異世界の出来事でしかないように穏やかな笑みが、言った。

「今日も早く帰ってくるんだぞ、美幸」

「うん。わかった」

兄が世に言うシスコンなら――自分は、ブラコンだろう。

じゃくり。

窓から朝日が注ぎ込む、穏やかな朝の風景。

死体を遺棄し、損壊させるような異常者とは、なんの接点もない、日常。

じゃくり。

だから美幸は、ただ平凡な女子中学生として、今日も家を出たのだった。





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