成長する
横断歩道が青になったことを、カッコウの鳴き声みたいな音が報せる。
「おっと、ずいぶん話しちまった。さすがに、三回も横断歩道見過ごしちゃあマズいわな」
「え? えっでも、今青になったんじゃ……?」
「三回目だよ、三回目。お前がぽけーっと考え込んでる間に二回、信号は青になってたんだ」
「そん、な……」
やはり、自分は、どこか、おかしい。
じゃくり。
と音がして、美幸は顔を上げた。革靴で路上のわずかな砂利を踏んだ和幸が、手を振りながら、背中で言ってくる。
「じゃあな、北の。お前の兄ちゃんに、よろしくな」
「まっ、待って! あの、お兄ちゃんの知――」
じゃくり。
「――り合いなんですか……!?」
と、訊ねた美幸の前では、いつの間にか、車が右から左、左から右へ流れていた。
気づかないうちに、横断歩道がまた赤になっていたのだ。
和幸の言うことが本当ならば、これで自分は、四回目の赤信号。
殺された親友――消えた親友――謎の女性と男性――化け物の少女――
「なにが、どうなってるの……?」
それからもうしばらく、美幸はその横断歩道の前で、立ち尽くしていた。
「おっと、ずいぶん話しちまった。さすがに、三回も横断歩道見過ごしちゃあマズいわな」
「え? えっでも、今青になったんじゃ……?」
「三回目だよ、三回目。お前がぽけーっと考え込んでる間に二回、信号は青になってたんだ」
「そん、な……」
やはり、自分は、どこか、おかしい。
じゃくり。
と音がして、美幸は顔を上げた。革靴で路上のわずかな砂利を踏んだ和幸が、手を振りながら、背中で言ってくる。
「じゃあな、北の。お前の兄ちゃんに、よろしくな」
「まっ、待って! あの、お兄ちゃんの知――」
じゃくり。
「――り合いなんですか……!?」
と、訊ねた美幸の前では、いつの間にか、車が右から左、左から右へ流れていた。
気づかないうちに、横断歩道がまた赤になっていたのだ。
和幸の言うことが本当ならば、これで自分は、四回目の赤信号。
殺された親友――消えた親友――謎の女性と男性――化け物の少女――
「なにが、どうなってるの……?」
それからもうしばらく、美幸はその横断歩道の前で、立ち尽くしていた。