成長する
ふらふらと歩いていても、補導されるかもしれない。

どこかカフェにでも入ろうかと思ったが、財布は鞄の中である。

駅などの待合室なら座れそうだが、ひと気の多いところでは、補導とは違うものが自分を見つけそうだから、やめた。

結局、行くあてもなくふらついた美幸は、西区の住宅街寄りにある、公園に立ち寄った。西区は、大木市でも特ににぎわっている。公園も多いし、広いのだ。幸い、外でのんびりしていても寒いような季節ではない。草場の陰になっている木に寄りかかり、美幸は考えごとを始めた。

なぜ?
なぜ?
なぜ?

それがパンクズになる。

疑問をほどけば糸口が見つかり、それを辿れば真実に行き着くはずだ。

どうして、美幸ではなく琴美が狙われたのか。

どうさて、美幸は失踪してしまったのか。

なぜ?
なぜ?
なぜ?

(考えて美幸、考えて……)

なぜ?
なぜ?
なぜ?

どうして自分は、昔の友達のことを覚えていないんだろう。

どうして今日は、体内時計が狂ったんだろう。

(違う、美幸、考えるのは、それじゃなくて……)

なぜ?
なぜ?
なぜ?

どうしてあの時、あの女性に見つめらるのが怖かったんだろう。

どうしてあの時、信号が何度も変わったことに気づかなかったんだろう。

(違う、違う、集中して、美幸……。琴美ちゃん、奈美ちゃんのことに、集中して)

なぜ?
なぜ?
なぜ?

犯人は、被害者の手足をもぐのか。

それが現場のどこにも残されていないということは、犯人が持ち去っているということだが……それはまた、どうして?
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