成長する
(奈美ちゃんも、琴美ちゃんも、いいとこ、たくさんあったなあ)

奈美の、見た目の綺麗さや、優雅さ。

琴美の、底のない明るさや、元気さ。

羨ましかった。とても、いい友達だった。

なにより、一緒にいて、刺激してもらえていた。

「奈美ちゃん……どこ、行っちゃったの……?」

空を見上げても、梢からは能天気明るい青がちらちらと覗いているだけである。今日は快晴だが、美幸のここはまったく晴れ晴れしくなどない。

頭のいいあの美少女ならきっと、強気な発言でドンドンどんどん、次はなにをする、次はどこへ向かうと、自分を引っ張ってくれただろうに。

もう、いないのだ。

たぶんきっと、例の少女に襲われてしまったのだ。

――でも……そうだとしたら、遺体は?

今までの被害者はみんな、手足はもがれていたものの、ほかの部分は残されていた。
もしかしたら奈美は、襲われていないかもしれない。ただ単に、そう、またどこかへ調査に出かけているのかもしれない。

でもどこへ?

家にも戻らず?

連絡さえ入れず?

そう考えたら、それはそれで奇妙なのである。
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