成長する
空を見上げたまま、美幸は、なんとはなしに、いなくなった二人の親友の名前を呟いた。

呟いて、その響きが頭の芯にじゃくりと刻み込まれるのを、感じた。

じゃくり。じゃくり。二人分。

そしていつの間にか、美幸は木に寄りかかって空を見上げたまま、眠ってしまった。




じゃくり。じゃくり。じゃくり。
かちんっ。




「っ」

体内時計が午後四時を過ぎた時、美幸は覚醒した。

が、それはズレてしまった体内時計による、午後四時である。

空はすでに暗澹とし、空の高いところでは、星がまばたいていた。

「うそっ、もう夜……! 私、こんなところで寝てたの……!?」

こんなところで眠れたこと、いつ眠ってしまったか覚えていないこと、とにかく自分の非常識さに驚きながら、美幸は立ち上がろうとした。

その時、また、めまいが。

まるで、寄りかかっていた木に背骨を置いてきてしまったように、体の力が入らない。美幸は無様に、顔から倒れ込んだ。

じゃくり。

と、頬を芝生にこすりつける。幸い、アスファルトではなく草場である。皮膚を削られることはなかったが、とても痛かった。すりむいたのは確実だ。

「っつつつ……っぅ……」

鼻を啜るように、薄っぺらく息を吸い、吐いて、美幸は痛みをこらえた。指がしびれているし、頬は熱い。触ってみても、血が出ているかわからなかった。
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