成長する




学校でもやはり、話題は件の殺人事件だった。

同じ市内、しかも自分達の住まう土地で、連続しているのである。

噂話に目がない若人が、これに惹かれないわけがなかった。

「だからね、なにかの共通点があるんだよ、きっと! 犯人には、絶対美学のルールがあるんだって!!」

と、拳を固めて熱く説くのは、おさげと丸メガネがチャームポイントと自負する琴実だった。

背は小さいがひとつひとつの動作が大きく、ハキハキ喋るため、よく弾ける花火のような印象。クラスでも人気者である。

今は、胸の成長が始まらないとかで悩んでいるとか、美幸は相談を受けていた。

始まらないのは自分も同じなので、なんとも答えられなかったが。

「狙われたの、三人中三人とも女子中学生だったでしょ! そこが共通点なんだよっ!! 犯行に共通点は絶対なんだよっ!! 美学なんだよ!」

「さあ。どうかしら。犯罪に美学もなにもないと思うわ。こじつけみたいで、バカみたい」

と、冷ややかに反論したのは、茶に近い黒髪の、緩くウェーブのかかった毛先を指に絡めて遊んでいる奈美である。半分しか開いてないような虚ろな目で琴実を見やる。
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