成長する
黙っていれば穏やかで優しそうなお嬢さまだが、いかんせん毒舌である。言葉の鋭さで奈美の上をゆく者はクラスにひとりとしていない。

「美学なんて、しょせんは犯罪を正当化したいだけの言い訳よ。自分が正しい、すばらしいって言って、崇高だって思い込みたいだけ。一種の自己陶酔だわ。バカみたい」

その、「バカみたい」と同時に肩を竦めるのが、奈美のお決まりだった。

「そんなのを褒めてたら、世の中狂っちゃうわよ。それともなに? 次、爆弾テロが連続し出したら、爆発は芸術だとか説くつもり?」

琴実は拳を握る。そして掲げた。

「そう! 爆発は芸術だよ!! 花火のように燃え上がるような、まさしく芸術!!」

「はあ……。やってらんないわね。もっとバカみたい。ねぇ、どう思う?」

手厳しく一蹴した奈美が、美幸に意見を求めてくる。

基本、美幸はこうした、親友らやクラスのやり取りを観察する側なので、ふとしたタイミングで投げかけられるのは苦手だった。

だから、

「うーん……怖い、かな、やっぱり」

と、至極ありきたりなことしか返せない。

が、奈美にとってはそんな、ありきたりなところこそお気に召したらしい。
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