成長する
兄が手に持っているのは、親友の、生首だった。無理矢理引きちぎられたらしい分裂面からは、ぽたぽたと、液体がこぼれている。
「よくも美幸を……! よくもっ、よくもぉおおお……! アンタ、自分の妹に、なんて、なんてこと……っ! この外道――ぐえっ!?」
「だれが、外道だって?」
距離は、あったはずだった。しかし、目にも止まらぬ一瞬で目の前に立った兄が、奈美の鳩尾に肘鉄を入れた。胃液を吐き出して悶える奈美の正面に、兄は、美幸の頭部を差し出す。
「――ひっ」
見開かれた目の、眦、目頭からは、血が細い筋になって垂れていた。親友のこんな姿を、見ていられない。
なのに兄は、「よくご覧」と言う。
「美幸は、まだ生きてる。死んでなんかいない」
「な、なに、言って……」
頭をもがれて生きていられるわけがないのに。
しかし、兄は依然微笑んだまま、
「ほら、聞こえないのかな、この音が」
美幸の頭を、奈美の肩に乗せた。いや、奈美の耳に、押し当てた。
「よくも美幸を……! よくもっ、よくもぉおおお……! アンタ、自分の妹に、なんて、なんてこと……っ! この外道――ぐえっ!?」
「だれが、外道だって?」
距離は、あったはずだった。しかし、目にも止まらぬ一瞬で目の前に立った兄が、奈美の鳩尾に肘鉄を入れた。胃液を吐き出して悶える奈美の正面に、兄は、美幸の頭部を差し出す。
「――ひっ」
見開かれた目の、眦、目頭からは、血が細い筋になって垂れていた。親友のこんな姿を、見ていられない。
なのに兄は、「よくご覧」と言う。
「美幸は、まだ生きてる。死んでなんかいない」
「な、なに、言って……」
頭をもがれて生きていられるわけがないのに。
しかし、兄は依然微笑んだまま、
「ほら、聞こえないのかな、この音が」
美幸の頭を、奈美の肩に乗せた。いや、奈美の耳に、押し当てた。