クロスロードラヴァーズ













同日の夕方。



「はあ……。」


公園のブランコを漕ぎながら、深いため息をつく郁の姿があった。



「よーし、家まで競争して帰るよ、りっちゃん!よーい……どん!」


「あー、ずるいよ、お姉ちゃん!」


最後まで公園に残って遊んでいた姉妹も、駆け足で帰って行き、公園に居る人間は郁一人だけになった。



(オレ……無神経なこと、言ってしもたなあ。意気消沈しとる梓はんを励ますどころか、余計落ち込ませてもうたわ。)


自己嫌悪して、再び長い嘆息をする郁。

そんな彼女に



「なーに、らしくねえ顔してんだよ、ボーイズ系。」


誰かが声をかけてきた。



「んっ……?誰やねん、変な声かけするんは。」


郁が顔を上げると、目の前には一人の男性が立っていた。


歳は二十代前半といったところだろうか。

一部だけ赤い黒髪に耳にデカピアス。

金色のグラサンをかけているため、瞳の色はよく見えない。
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