クロスロードラヴァーズ


「時神 火槌だ……って、知ってんじゃねえかよ!」


やや怒り調子で突っ込みを入れる男性に対し、郁は全く気にせずマイペースに続ける。



「そもそも、ボーイズ系って何やねん?気取った呼び方のつもりやったら、正直寒いわ。第一、オレには的場 郁っちゅう立派な名前があるんやから、変な呼び方せんといてや!ほな、そういうことで。」


「“ほな”じゃねえよ、待ちやがれ!」


「おわっ!?何すんねん!」


ブランコからひょいと降りて帰ろうとする郁の左腕を、火槌がガシリと掴む。



「痛いやろ!離してえや!離さへんと、警察呼ぶで!」


「散々、俺様をコケにしてこのまま無事に帰れると思ってんのかよ?」


「うっ……。」


郁の背筋にゾクッと寒気が走る。

火槌の瞳が、獲物を狙う狼の目のように鋭く細められていたからだ。
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