クロスロードラヴァーズ
「……まだ何か用か?」
振り返って、梓をじっと見返す聖河。
梓は彼の左腕をがっしり掴んで、肩で息をついていた。
「はあ……やっと……追いついた。せっかくだから……少し上がっていけばいいのに。その……お礼もしたいから。」
「……礼は別に要らない。それに……長居すると、迷惑になるだろ。おまえの兄は、自分のことをあまり快く思っていないようだからな。」
「柳兄のことは気にしなくていいから。どうしても急いで帰らなきゃダメなの?」
「……いや、急いで帰る理由は特に無い。留まる理由も無いが。」
頑なに帰る意志を見せる聖河の様子に、じゃあ……と梓は携帯を取り出して彼の前に突きつける。