クロスロードラヴァーズ
「柳兄には関係ないでしょ。……大体、おせっかいなんだよ、柚枝は。押し付けがましい優しさなんて要らないのに。」
「何てこと言うんだ、梓!親友に向かって……」
「いいの、柳都兄さん!梓ちゃん……うちのこと、うっとおしく思ってたの……?」
柳都の言葉を遮って、柚枝が問いかける。
瞳にはうっすらと涙が浮かび、声も震えていた。
「………。」
梓は答えない。
チラと柚枝を見ただけで、すぐに視線を全く関係ない方へと向けてしまった。
「……わかったよ、梓ちゃん。うちは……もう要らないんだね?」
梓が答えるより早く、柚枝は台所に走った。
「柚枝!一体、何を……」
「来ないで!」
柚枝を追って走り出そうとした柳都の顔から、一瞬にして血の気が失せ、言葉も継げなくなった。
なぜなら、柚枝の右手には包丁が逆刃持ちされており、その矛先が彼女の左胸部に向けられていたからである。