クロスロードラヴァーズ


その後のことは、まるでスローモーションのように梓の目に移った。



「柚枝ー!!」


柳都の悲痛の叫び声が響き、



「くっ……やめろ!!」


聖河が駆け出す。


梓自身も何か大声で叫んだような気がした。


刃先が柚枝の肌に食い込む直前、



「きゃっ!?」


彼女の手から、聖河が包丁を叩き落とす。

包丁は乾いた音を立てて、一メートルほど離れた位置に落ちた。


梓と柳都がホッとしたように息を吐く。



「なんで……なんで助けるの……?梓ちゃんにも嫌われて……嫌いなあなたに助けられるぐらいなら……助かりたくなんかないのに……!」


柚枝は床に両膝をつくと、両手で顔を覆いすすり泣き始めた。
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