クロスロードラヴァーズ
「………。」
聖河は何も言わない。
泣いている柚枝を、冷めた瞳で見下ろしているだけだ。
「うちも……柳都兄さんも……あなたが居る限りは……梓ちゃんの一番になれない……。だったら……うちの存在理由なんてないんだから……。」
「柚枝……。」
梓は何か声をかけたかったが、かける言葉が浮かんで来なかった。
柳都は、駆け寄るべきかそっとしておくべきかを思案しているようで、その場から動かない。
「そう……。此処梨 聖河君……あなたが居る限りは……。」
「ならば、こうすれば満足か?」
聖河はそう言うと、柚枝が落とした包丁を拾い上げた。
「えっ……?」
「聖河、何を……あっ!?」
「此処梨!?」
柚枝、梓、柳都の三人の視線が集まる中、聖河は躊躇する素振りを見せずに包丁を自分の左脇腹に深々と刺した。