クロスロードラヴァーズ



「別に……謝らなくていいけど。お礼言われるようなこともできてない……」


「梓!此処梨が目を覚ましたって!?」


梓の声を遮るように、ドアの開閉音と男性の声が聞こえてきた。



「り、柳兄……。うん、見ての通りだけど。」


「そうか……安心したよ。他人とはいえ、目の前で死なれたら気分は良くないからな。」


観点は少しズレているが、彼なりに心配していた気持ちが聖河にも伝わった。

聖河は縁起でもないなと顔を引きつらせる。



「……勝手に自分を殺さないでくれ。」


「まあ、今のは冗談だよ。僕は君のことが嫌いだからね。心から君の安否を心配していたなんて、素直に言いたくないんだ。」


「言ってるじゃないですか、柳都兄さん。」


柳都の後ろから、右手を口元に当ててクスクス笑う柚枝の姿が見えた。
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