クロスロードラヴァーズ



「ああ言ってるけど、聖河が倒れた後、救急車の手配の指示とかケガの処置とかしたのは柳兄だからね。」


梓がこっそりと聖河に耳打ちする。



「あ、梓!そんなことはバラさなくていいだろ!」


「そうだったのか……。」


「か、勘違いするんじゃないぞ、此処梨!僕はただ……梓や柚枝を悲しませないためにやっただけで!き、君のことが嫌いなのは本当だからな!」


顔を赤くして必死に否定する柳都。



「柳都兄さん。そんなに否定すると、却って嘘っぽく聞こえますよ。」


「ゆ、柚枝まで、揚げ足を……。こ、此処梨の無事は確認できたことだし、僕はもう帰るからな!!」


柳都は赤面したまま言い放つと、くるりと踵を返し駆け足で病室から出て行った。

……はずだったが、なぜか数秒の内に病室に舞い戻ってきた。
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