クロスロードラヴァーズ



「あれ?柳都兄さん……帰るはずだったんじゃ……」


柚枝以下三人は不思議そうに首を捻ったが、すぐにその理由がわかった。



「失礼するよ、此処梨君。君の家族の方はここに居るかい?」


聖河のオペを担当したドクターが、病室に入って来たのである。



「あっ、えっと……」


「どうかしたんですか?」


どう言おうか悩む柚枝に変わり、柳都がドクターに尋ねる。



「どうかしたというわけではないんだが……ケガのことで少し気になることがあったものでね。」


「気になること?それは……何ですか?」


梓が訊く。



「いや……此処梨君のプライバシーに関わることだから、家族以外の方の前では……」


「別に構いませんよ、先生。……自分が刺した傷の場所のことですよね?」


聖河の質問に、ドクターは短い沈黙の後、重々しく答えた。
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