クロスロードラヴァーズ



「まあまあ、梓ちゃん。お見舞いなんだから、そんな仏頂面してないで楽しい話しようよ!」


「仏頂面なんかしてないけど。」


「そうかな?じゃあ、笑ってよ、梓ちゃん。聖河君も梓ちゃんの笑顔が見たいと思うよ。」


柚枝は見たいよねと聖河に話を振る。

梓がチラッと横目で聖河を見た。



「見たくないわけではないが……自分は、笑いたくない時に無理に笑ってもらう必要は無いと思う。」


「ええっ?そこは見たいって言おうよ、聖河君。ノリ悪いよー。」


柚枝は苦笑しながら、残念そうにわざと肩をすくめてみせた。



「そんなことより、これ……持ってきたんだから受け取ってよ。……重いんだから。」


理由のわからない苛立ちを隠すように、梓は聖河の胸に赤いりんごが三つ入ったカゴを押し付ける。
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