クロスロードラヴァーズ











「何よ……自分を殺そうとした人間にデレデレしてさ!」


昼間の宇都町家のリビング。

梓は白い壁に向けて、四角いクッションを思い切り力を込めて投げつけた。


ディズニーキャラクターが描かれたそのクッションは、ボフッと音を立てて、丹念に磨かれた床に埃を舞わせる。



「柚枝だって、聖河のこと嫌いとか言ってたくせに……あんな親しげに……。なんか……ものすごく腹立つ!」


梓は苛立ちに任せて、ソファーに置かれていたもう一つのクッションを投げる。

犬の絵がプリントされた丸いそのクッションは、壁ではなくローカに落ち、そのまま滑って玄関へ。



「あっ、しまった……。今のは、柳兄のお気に入りクッションだった……。はあ……。」


梓はため息をついて立ち上がると、クッションを取りに玄関へ歩いていく。
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