クロスロードラヴァーズ

そして、腰をかがめクッションを拾おうとしたその時。


ピンポーンと単調な玄関のチャイム音が鳴り響いた。



(んっ……?宅配便か薬屋かな?)


梓が考えていると、もう一度ピンポーンとチャイムが鳴った。



「……はいはい。今、開けるから。」


面倒くさそうに顔を歪め、梓は玄関の鍵を開けドアを引く。



「梓はん、お久しゅう!」


開いたドアの前に居たのは、緑髪のショートヘアに焦げ茶色の瞳を持つ少女だった。

右目下に泣きボクロがあり、左腕には青いリストバンドを付けている。



「えっ……郁?本当に、郁?」


「なんや、梓はん。その鳩が豆鉄砲食らいはったみたいな顔は。ほんまにオレやで?」


郁と呼ばれた少女は、左右非対称な笑みを浮かべて返した。

名字は的場。梓のいとこである。
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