クロスロードラヴァーズ
「梓だったら……か。」
一人きりの病室で、聖河はポツリと呟いた。
それとほぼ同時に、
「聖河……今、そこで柳兄に会ったけど、何を話してたの?」
「梓……。」
梓が病室に入ってきた。
「柳兄……変なこと言ってないよね?柳兄の言うことは気にしなくていいから。」
そう言うと、梓はベッド右側の丸イスに座り、見舞いのフルーツかごからリンゴを拾い上げた。
「リンゴ……食べる?剥いてあげようか?」
「ああ……頼む。果物ナイフは、テレビ下の引き出しの二番目だ。」
聖河が指示した位置を開けると、百円均一にあるようなミニバサミや爪きり、ピンセットなど刃物類が入っていた。
梓はそこから果物ナイフを取り出し、リンゴの皮を剥いていく。
「私さ、リンゴの味は嫌いだけど、剥くのは好き。……というか、皮むきが下手だから練習するために剥きたいってのが本音だけど。聖河は……意外と上手そう。」