クロスロードラヴァーズ


「意外と……か。確かにリンゴの皮むきは得意だ。料理が趣味だからな。」


「へえ……いいお嫁さんになれるんじゃない、聖河って。」


「……自分にウェディングドレスを着ろと?」


おどけるように訊く聖河に、それ見てみたいかもと苦笑しながら梓が返す。



「梓の趣味は何だ?」


「私の趣味?急に言われても……思いつかない。料理はあんまり好きじゃないし、面倒なことは嫌いだから。しいて言えば、ソファの上でうたた寝することかな。」


皮むきを終えて、梓のリンゴとの奮闘は芯とりと八等分に切る段階に入っていた。

数センチ単位で切れたリンゴの赤い皮は、ゴミ箱の中にすっぽり収まっている。
< 79 / 230 >

この作品をシェア

pagetop