クロスロードラヴァーズ



「美味しい?見た目は悪いけど、リンゴ自体は不味くないと思う。……自信ないけど。」


「……美味しいな。」


「本当?まあ、誰が剥いてもそのリンゴは美味しいんだろうけど。」


違うなと聖河は首を軽く左右に振った。



「リンゴは剥く人間によって味が変わる不思議な果物だ。」


「……デタラメじゃないの、それ?」


「信じていないのか?本当なのだが……。今度、梓も食べ比べてみるといい。剥き方が上手い人間とそうでない人間が剥いたリンゴ……どちらが美味しいのか。」


どっちが美味しいのと、梓がもっともな質問をする。



「梓はどちらだと思う?」


「私は……変わらないと思う。だって、リンゴはリンゴじゃない。聖河は……答えを知ってるの?」


「無論だ。自分の母親が剥いたうさぎ形のリンゴはあまり美味ではなかったが、叔父が剥いたリンゴは美味しかった。それがヒントだ。」


「……あまり上手くない人が剥いたリンゴの方が美味しいってこと?」


さあなと聖河はうそぶいて、微笑んでみせた。
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